トップレポート/経営の極意は「ダム式経営」
-
業種
病院・診療所・歯科
介護福祉施設
企業経営
- 種別 レポート
経営の極意は「ダム式経営」
株式会社日本経営 / 専務取締役 井上 陽介
大きな影響を与えたパンデミック
2020年4月7日、新型コロナウイルス対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が、我が国で初めて適用されました。
あれから15ヶ月(本原稿執筆時点)が経過していますが、現在も一部の地域に4回目の緊急事態宣言が発令中となっています。
この度のパンデミックでは、人々の生活や医療現場はもちろんのこと、我々ビジネスの世界にも大きな影響を及ぼしています。
感染の元凶とでも言わんばかりに飲食店に対する締め付けは相当なもので、我々の生活圏にある飲食店でも何店舗も閉店していかれました。閉店と言っても個人の1店舗の廃業から何店舗も経営する企業の一時休店、または一部閉店まで様々ですが、個人事業であっても「経営」です。
分相応のダムをつくり、有事に備える
経営には山あり谷あり、景気にも好景気、不景気がある中で、経営者はどんな環境変化に陥ろうとも経営を安定的に行うために手を打っておかなければなりません。
その具体的方法が「ダム式経営」です。
ダム式経営という概念は、パナソニック社の創業者である松下幸之助翁が1965年に提唱した概念です。これは、大企業だからできるというものではなく、個人事業から大企業まで分相応のダムを経営者が考えて、有事に備えて蓄えておく心構えが必要であるというものです。
お金を貯めておくことだけがダムではありません。
資金はもちろんのこと、人材のダム、設備のダム、信用のダム、人間関係のダム、組織文化のダムなど、どれも数日で貯まるものではないでしょう。
経営者が経営を通じて理念を高め続け、経営が順調な時に経営資源を使い切るのではなく、蓄えに回すことを繰り返し繰り返し実践することで貯まるものなのです。
カリスマ性ではなく、醸成された組織の文化
かく言う我が社も、岐阜県出身の創業者が大阪の経理事務所で修行し、個人事業の税理士事務所として創業したことが原点なのですが、創業当初のエピソードとして、創業者が修行時代の師匠から「銭がないのは首がないのと同じやで」と言われ、恩人から「夕刊買う金があったら貯金しろ」と言われたことが、我が社流のダム式経営の起点になっています。
正しい経営をして社会から信頼・信用を得て利益を上げ、納税し、資金を蓄え、人材を育てる。そして、経営資源を充実させ、経営理念を明確にして高次化する中で組織文化を高めていくのです。
有事の時に真の意味で力を発揮するのは、1人のリーダーのカリスマ性ではありません。時間をかけて醸成された組織の文化(理念)なのです。
有事のときこそ、世のため人のために舵を切る
ダムに蓄えがあり、組織の文化が際立っていれば、有事の時にも政府の方針や環境に文句を言うのではなく、自分たち以上に困っている周りの人々のために何ができるかを考えて今まで以上に世のため、人のために尽くすことに力を注げるはずです。
人は困っている時に助けていただけたことは一生忘れません。平時に戻ればきっと恩返しをしてくれるでしょう。
有事には有事の経営に舵を切るのが、経営者の仕事であると考えます。
その舵が切れる為のダム作りを、今後も意識して経営にあたっていただきたいと思います。
このレポートの解説者
井上陽介(いのうえ ようすけ)
株式会社 日本経営 専務取締役
医療機関・介護施設・一般企業を対象に経営・組織の改革・改善を行う経営コンサルタント。現在では、社内のコンサルティングチームの編成を行い現場でも実践指導を行う一方で、日本経営グループ全体の人事部門統括を兼務している。組織内外のあらゆる経営・労務リスクを考慮した経営支援の実践・姿勢に顧客から定評がある。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
コンサルティング事例・サービスのご紹介
人事制度構築
人事制度導入、同一労働同一賃金対策、組織活性化など、組織強化を通じて経営成績を向上させる人事コンサルティング
人材育成・研修
人材育成(マネジメントスキル・ヒューマンスキル向上)を支援するサービス
従業員意識・満足度調査
組織の活性度を測定し、効果的な改善ポイントを明示する探求型アンケートシステム